[Ukyo in Acton] 仁和寺


取材・執筆:宮本千晴、佐々木瑠花

大石隆淳さん(財務部長)

仁和寺は仁和4年(888年)に創建された寺院で、現在は真言宗御室派の総本山です。 境内には、五重塔や二王門など江戸時代に建立された建造物が並んでいます。平成6年には世界遺産に登録されました。取材日には、まず、仁和寺の御殿を財務部長の大石隆淳さんに案内していただきながら参拝しました。終戦の頃の天皇に関わるお話や、寝殿に使われている木のお話、襖に描かれている絵のお話など多くの貴重なお話を聞くことができました。インタビューの後は、仁和寺VR『雲上の国宝展』を体験しました。国宝・重要文化財の仏像がVR上で手が届きそうなくらい近くに来てとても興奮しました。インタビューでは、このようなデジタル化に関する取り組みや、仁和寺が右京区でどのような役割を果たしているのかをお聞きしています。大石様のほか、課長の金崎義真さんにもお話しを伺うことができました。

—仁和寺に入職されてから何年になりますか?

大石:現在の門跡が同級生だったことがきっかけで、平成26年5月に仁和寺へ来ました。20代の時から寺の住職と役所の仕事を両方していました。60代で定年を迎え、その後66才で仁和寺へ呼ばれて来ました。

—仁和寺では主にどのような役割を担われていますか?

大石:主に財務部長、拝観関係業務、仁和寺の景観維持をしています。現在は新型コロナウイルス感染拡大による財政の立て直しが重要な課題です。

右京区または右京区で生活する区民にとって、仁和寺はどのような場所ですか?

大石気持ちに余裕を持ってもらう場所を提供しています。皆さんに仁和寺でゆっくりしていってほしいです。仁和寺に行けばお坊さんに話を聞いてもらえ、自分の苦労を和らげることができると皆さんに思っていただける環境を作りたいです。

今後さらに仁和寺が地域コミュニティに貢献するにはどのような方法があると思われますか?

大石:右京区の方々にもっと仁和寺を知ってもらう必要があると思います。仁和寺に親しみを持ってもらい、右京区に溶け込んで行きたいです。春と秋のライトアップの際には、団体で右京区の方には無料で入ってもらっていますが、まだ周知が十分ではありません。広場を貸していますが、右京区の中にもっと浸透していく必要があります。

「清掃ぼらんてぃあ」について教えてださい。

大石:「清掃ぼらんてぃあ」では境内とOMURO88(御室成就山88ヶ所)清掃登山を行っています。100人くらい来て欲しいと思っていますが、現在は20-40人程度です。立命館大学の学生が20人くらい清掃来てくれており、それ以外の方は一般の人です。もっと多くの方にぜひ清掃ボランティアに来ていただきたいです。

京都には仁和寺以外にも由緒ある寺院や観光地がありますが、昨今では外国人観光客が増加したことによって、多言語化が問題視されています。海外からの参拝客に向けた取り組みとしてどのようなことをしていますか?

大石:国から助成金をもらって、英語、中国語、フランス語、韓国語など多言語化に力を入れています。さらに、Q Rコードから拡張3Dマップを日本語、英語、中国語、韓国語で閲覧することもできます。仁和寺は京都のお寺の中でデジタル化において最先端です。

仁和寺のウェブサイトで境内マップを拝見し、車椅子やベビーカーの人を対象にしたユニバーサル版があるのが珍しいと思いました。これらの境内マップの制作に至った経緯などについて教えていただけますか。

大石:ユニバーサル版のマップは、京都大学と共同で国からの助成金を得て制作しました。

金崎:敷地が広いので、初めて参拝する人に分かりやすくするために作りました。また、参拝客の年齢層が高いので、若者の参拝客を増やせるように現在対策中です。例えば、若い人に興味を持ってもらうために立体的な画像をパンフレットの地図に使用し、表紙の写真にもあえて青空ではなく曇り空を使っています。若者に認知してもらうために行っているこれらの取り組みが、将来的に若い年代の参拝客増加に繋がると嬉しいです。さらに、お寺の敷地が広すぎるというのを長所と捉え、そのスペースに芸術アートを展示することで有効活用しています。

仁和寺の歴史を受け継いでいく上で、最も大切にしていることは何ですか?

大石:仁和寺は、世の中が平和にみんなが幸せになるように祈願してきました。今生きていることを幸せとみんなが思えるような場所にしたいですし、皆さんにもそれを肌で感じとってほしいです。