[Ukyo in Action] すこやか嵯峨野ファーム
取材・執筆:佐々木光、西村有理亜
今井義弘さん(農園主)
すこやか嵯峨野ファームは、右京区嵯峨広沢に位置する農業体験農園です。区画貸しで自由栽培をする一般の市民農園とは異なり、農園主の指導のもと作付けから収穫まで一貫した農作業を体験できる消費者参加型の農園です。苗や肥料、道具などは全てファームに用意されており、農業エキスパートの今井義弘さんによる丁寧な指導がなされるため、農業初心者でも安心して参加できます。こちらの農園では、有機農業を目指して、できるだけ殺虫剤などの農薬を使わずに野菜を育てることにこだわられているため、安全でおいしい野菜をたくさん収穫することが可能です。また、子供から大人まで様々な年代の参加者が利用し、一緒に野菜を育てながら交流できるため、地域交流のプラットフォームとしてもご活躍されています。
—すこやか嵯峨野ファームでどのくらい働かれていますか?
今井:平成27年からなので6年前からここで働いています。
—すこやか嵯峨野ファームでの主な仕事や役割はなんですか?
今井:すこやかファームでの活動は、従来の農家の仕事、自らが農作業をして野菜をスーパーに卸すというスタイルに農作業の指導、地域福祉、農業を知ってもらい、未来につなげるなどの、より広い農家のあり方を追求した活動、役割を果たすことを目指しています。また、米の栽培も行っており、主に南丹市や亀岡で育てています。すこやか嵯峨野ファーム以外にも亀岡や吉祥院に畑があり、大学の先生などとも協力して新しい野菜の開発にも努めています。
—すこやか嵯峨野ファームでの日常の仕事について教えてください。
今井:経営・経理は息子が行なっており、管理や作付けは主に自分で行っています。また何の野菜を作るかやどれだけの量を作るのかも決めています。季節に農園計画を行い、一人一人の畑の手入れが順調に行われているかなど、アドバイスしながら収穫の喜びを共有できるようにしています。
—すこやか嵯峨野ファームは、右京区や右京区民の暮らしの中で、何か特別な役割を担っていると考えていますか?それは何ですか?
今井:野菜ができる過程を知るという原点に戻ってもらうことが、自分が担う役割だと思っています。この辺りは都心に近いので、人々にとって農業は身近なものではなく、農業でどのようなことが行われているかわからない人が沢山いて、土つきの野菜も身近なものではありません。私の役割は、そのような方に本来の野菜の生育を間近に見てもらい、自身で体験してもらうことで農業に対する知識がつき、その知識を他の人に教えることで、男女を問わず、年齢を問わず、コミュニケーションができ、つながりが生まれます。そういった参加して楽しいコミュニティを作ることも、すこやか嵯峨野ファームの役割だと思っています。
—今後、すこやか嵯峨野ファーム、またはご自身が、地域社会でどのような役割を担っていきたいとお考えですか?
今井:今行っている活動こそが地域社会を担っていると考えています。今まで様々な形で地域社会に貢献してきました。それは、「農業を通して何ができるか」という基本を崩さず、地域社会に貢献できれば、と考えてきた結果だと思います。
—農業体験に参加されるのは主にどの年代の人たちですか?また、他の年代の人たちに参加してもらうための方法として、お考えのことはありますか?
今井:いろんな年代の人たちがいます。親子連れが多いですが、最近ではコロナの影響もあり、大学生が休みを利用して友達と一緒にやりたいとか、食の問題から、子ども食堂さんの参加などもあります。高齢の方は、「一日に一回太陽を浴びたい」、「畑の中を散歩したい」など、様々な年齢の方が自分のニーズに合わせて集まって来られます。また、幼稚園や小学校のカリキュラムの一環として取り入れてもらったりもしています。このように、参加していただいた方の輪が広がり、興味を持っていただけるよう、ホームページやパンフレットなどで広く呼び掛けています。
—農業体験を通して、参加者に一番学んでほしいことは何ですか?
今井:やっぱり農業に関して理解をしていただきたいですし、それを踏まえた上で農業を楽しんでいただきたいです。さらには有機野菜の美味しさを見て食べていただくことで、健康ですこやかな日々を送ることにつなげていただきたいです。
—すこやか嵯峨野ファームではどういった種類の野菜を育てていらっしゃいますか? 今後、新しい種類や珍しい種類の野菜を育てる予定はありますか?
今井:新しい野菜は常に探しています。また、すこやか嵯峨野ファームに参加している人たちからこの野菜を育てたいとリクエストを受けるので、それに応じて栽培する野菜を選ぶこともあります。気候と土に合うように作ることを心がけており、今までで約50種類以上の野菜を育ててきました。「新京野菜」も今後の新しい試みとして期待が持てます。
—コロナ禍ですこやか嵯峨野ファームはどのような影響を受けましたか?反対に、よかったこともあれば教えてください。
今井:コロナ禍でファームで集まることには今までとは違って、細心の注意が必要となりました。マスクやフェイスシールド、手指の消毒などもお願いすると同時に、指導場面でもできるだけ「密」を避け、何回かに分けて指導したり、少人数で行うなど、工夫をしています。しかし一方で、畑という自然の中で心が和んだり、癒されるという良さもあり、リモートでの仕事の合間に趣味として農作業を取り入れたいという方も多く、家族とのふれあいや地域の人たちとの交流の場を設けることができているのではないかと思います。
—すこやか嵯峨野ファームと海外とのつながりができるとしたら、海外の人にどのようなことを教えたいですか?
今井:農業体験を行っている圃場は東京を中心に150近く全国に散らばっており、東京オリンピックの開催をきっかけに農業体験を提供するネットワークも広がってきました。海外の方に観光の一環として日本の農業体験をしてもらえますし、日本の野菜の美味しさや完成度の高さは世界に誇れる面でもあります。また、手入れの仕方や収穫までの手順は、日本ならではの気候や土壌に合った農法で海外の方にも是非学んでいただけたら、という思いで指導しています。現在ファームにもフランス人の方が二名とドイツの方が一名おられ、文化の違いを超えて交流が進んでいます。野菜を介して自然に、料理の仕方や食べ方の話で盛り上がっています。そのようなことが、食文化、しいては日本の良さを伝える場となってほしいと願っています。