[Living Histories] 佐竹美和さん


取材・執筆:佐々木光、西村有理亜

佐竹美和さんは嵐山を拠点とする結婚相談所KUON KYOTOの代表取締役です。ご縁結びや結婚後の相談を行う結婚カウンセラーとしてご活躍されています。大阪、京都(烏丸)などを拠点に活動されていましたが、2年前にご自身で会社を立ち上げて嵐山に拠点を移されました。過去12年間で3500人のカウンセリングと750組の家族を誕生させてこられました。今年2月には、右京区が取り組む「右京かがやきミライ会議のイベント『右京流人生会議』2 にゲストスピーカーとして参加されています。

右京区ご出身ですか?どのくらいこちらに住んでいらっしゃいますか?

佐竹:生まれは大阪の南部です。結婚して京都に来ました。来年で右京区に住んで30年目を迎えます。

嵐山で結婚カウンセラーをされてどのくらいになりますか?また、具体的なお仕事内容も教えてください。

佐竹:結婚カウンセラーとして仕事を始めて14年になります。駆け出しは異業種から集まった、大阪を拠点としたベンチャー企業の初期メンバーとしてスタートしました。会社の規模が大きくなり京都にも支店を広げて活動をしていました。2年前に結婚相談の新たな形を作るために自身の会社として嵐山で結婚相談ビジネスを始めました。今の会社は、従来の結婚相談所が行っている結婚をゴールとした相談だけでなく、恋愛や結婚そしてその後の結婚生活が無知故に不幸にならないように「結婚」を学んでいただくことを大切にしています。相談者が人生100年時代を自分らしく楽しく豊かに生きるためのお手伝いをしています。具体的には、自分自身を知るためのワークショップ、女性・男性の体や心の違いについて学ぶワークショップ、家族写真を撮るイベントの開催さらには賢い離婚の相談まで、結婚後の生活のアドバイス、メンテナンスをさまざまな形で提供しています。

このお仕事をされていて一番大変だったことは何ですか?

佐竹:結婚相談をしていて辛かったことはたくさんあります。例えば、最近はAYA世代(若年成人)の癌が増えてしまうというケースに直面した時は如何ともし難い心苦しさがあります。また、発達障害の方やLGBTQ+の方々のご相談も増えましたが、相談を受ける我々の知識もまだまだ追いつかず、世間の結婚における多様性への理解もまだまだ遅れていて繋ぎたくても実現しなかった時には無力感に苛まれます。ただ、繋げなかったとしてもできる限り相談者に寄り添い一緒に未来を考えていく関係性を築くことを大切にしています。

佐竹さんがお仕事をされる上で最も達成感を感じる時はいつですか?

佐竹:相談者は自信を無くして相談に来られます。カウンセリングの中でその方の気付いていない魅力を発見し、ありのままの自分の存在の素晴らしさに気付かれた時の輝く相談者さんの目を見た時に互いに手を取り合って喜び合います。この時が嬉しい時ですね。また、相談者が結婚して子供が生まれた後にお目にかかった時「佐竹さんに出会えたからこそ今の幸せがあります」とおっしゃっていただけた時にも達成感や喜びを感じます。この時にいただく「ありがとう」は何物にも代えがたいです。

『右京流人生会議』について少し教えてください。ここではどんなお話をされたのですか?

佐竹:『右京流人生会議』では「自分らしい人生の最期を考えることから今の生き方が見える」をテーマにお話をしました。これは私自身が近年父、姑を亡くし、末期がんの娘を看病する中で「死」をとても身近に考えるようになったことがお話をするきっかけとなりました。人生という旅は、誰もが行き着く先は「死」であるにかかわらず自分の最期について語ることを忌み嫌う風習が根強くあるように感じます。あるデータによると、約7割の人は自分の最期が近付いた時、治療方法などの意思決定が自ら出来ない状態にあるという結果があります。従来の「人生会議」はもしもの時のために、自分が望む医療やケアについて前もって家族や医療者と繰り返し話し合い共有する取り組みをいいます。『右京流人生会議』では、「人生の最期はこうありたいな!」と語ることで、そのために今自分がやるべきことは何かをみんなで考えました。重い話題を「今」にフォーカスすることで人生の棚卸しのような感覚に捉えてどの世代の人にも取り組みやすくしました。大学生や40代の働き盛りの方に反応が大きくて、逆に70代80代の方に響きにくかったことが少々驚きでした。忙しく過ぎ去る毎日の中で立ち止まり「死」に目を背けずに向き合うという機会から本来の「人生会議」や人生会議に取り組むきっかけになる「もしばなカード」というカードゲームに興味を示していただけたら嬉しい限りだと思います。終活ノートは一度書いてしまうと遺書のようにアップデートできないですが、人生会議のいいところはどんどんアップデートしていけるところです。このゲームのカードを使えば、そういった重い話題でも気軽に大切な人の死生観について知ることができます。人生会議やもしばなカードの普及の一助になれたら嬉しいです。

今回のコロナ禍で、佐竹さんのお仕事にどんな影響がありましたか?

佐竹:お見合いがなかなかできなかったり、婚活パーティーを気軽に開けなかったりしたことが仕事に影響しました。Zoomでお見合いを行うことはありますが、やはりデートをして距離を縮めていっていただきたいので、会ってもらいたいのに会えないという状況は非常に心苦しいです。

京都の他の区と違って、右京区が特別だと思うことは何ですか?

佐竹:太秦映画村があったり、職人さんなどが多く活躍されたりしていることから、芸術的なところが他の区とは違う特別なところだと思います。嵐山にはよくテレビのロケ班が来たりして、ドラマや時代劇などの撮影の場としても多様に使われています。あとは、何と言っても嵐山というブランドが右京区の中でも特別で、他の区と違うところだと思います。

右京区の好きなところはどこですか?

佐竹:自然が豊かなところですね。今はコロナの影響で観光客の人たちが減ったことで本来の嵐山の美しさが戻ったのではないかと感じます。

右京区の歴史的または有名な場所で、他の人が一番面白い、特別だと思うのはどこだと思いますか?

佐竹:天龍寺が歴史的で有名な場所だと思います。天龍寺は庭がきれいですし、私の知り合いが京都に来た時は毎回天龍寺を案内しています。

右京区内で、佐竹さんが個人的に好きな場所はどこですか?

佐竹:広沢池という大覚寺の近くの池です。対岸は建物や電柱がなく日本の原風景のようです。池の表面が鏡面のようになる時がとても美しいです。四季折々美しい場所で自分の故郷の風景によく似ているのでお気に入りの場所です。

右京区について、何か変えたいことや改善したいことはありますか?

佐竹:飛び抜けた印象がないところが改善したい点ですね。右京区に住んでいて思うのですが、右京区の人は比較的保守的で、あまり変化を好まれない方が多いように感じます。右京区民に地元を誇りに思ってもらうためにも、もっと「右京といえばここ!」という場所やおしゃれな場所を増やしてもいいんじゃないかと思います。右京区には高齢者が多いこともあり空き家が多数発生していますし、こうしたスペースを利用しつつ、もっと芸術的な方達を巻き込んで地域活性できたらなと考えています。若者の力を使って右京区をPRできるといいかもしれませんね。

佐竹さんは、京都外国語大学や京都外大西高校について何かご存知ですか?何か知りたいことはありますか?

佐竹:京都外大西高校はスポーツの強豪校というイメージがあります。また京都外国語大学には森田記念講堂があって、学校の前の道を通る度にいつも綺麗だなと感じています。また、小さい大学ながらも活気のある印象があります。知りたいことは、一般向けの講義などは行っていらっしゃるのかどうかが知りたいですね。

右京区を一言で表現するとしたら、何ですか?

佐竹:右京区を一言で表現すると、「伸びしろが大いにある地区」だと思います。

 注1.「右京かがやきミライ会議」:「10年後も右京で暮らそう。だから今、10年後の右京を話そう。」をテーマに、令和元年と2年に行われた右京区の取り組み。

  2.「人生会議」:人生の最期に望む医療やケアなど、もしもの時のために家族や周りの人に知っておいて欲しい事を前もって考え、話し合い、共有する取り組み。